贈与した人が払うもの??
アメリカの贈与税は1924年に作られて、1926年に廃止された後に、本格的に導入されたのが1932年である。そもそもなぜ、1932年かといえば、1929年の大恐慌の後で税収が足らなかったからと言われる。1932年6月6日、最高遺産税率は45%に設定されている。贈与税は最高税率が33.75%で、設定生涯控除は$50,000だった。
その後、遺産税も贈与税も最高税率が上がっていく。
1934年5月11日、遺産税の最高税率は60%になった。贈与税は1935年1月1日から45%である。1935年8月31日遺産税は70%、1936年1月1日から贈与税は52.5%になった。生涯控除は$40,000である。
1940年6月25日さらに最高税率の一時的な上乗せ10%が決まり、
遺産税は77%、贈与税は57.75%となる。1941年9月に遺産税が77%で贈与税が57.75%と正式に決まった。さらに1942年1月から贈与税の年の非課税贈与を$3,000とし生涯控除を$30,000に引き下げた。
遺産税と贈与税の推移(第二次大戦前)
遺産税 |
贈与税 |
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1932年6月6日 |
最高税率は45%に設定 |
1932年6月6日 |
最高税率は33.75%に 設定生涯控除を$50,000 |
1934年5月11日 |
最高税率は60% |
1935年1月1日 |
最高税率は45% |
1935年8月31日 |
最高税率は70% |
1936年1月1日 |
最高税率は52.5% 生涯控除は$40,000 |
1940年6月25日 |
一時的最高税率は77% |
1940年6月25日 |
一時的最高税率は57.75% |
1941年9月21日 |
最高税率は77% |
1942年1月1日 |
最高税率は57.75% |
容易に想像できるように、アメリカは第二次世界大戦の戦費調達のために、税率を上げていく。さらに、気づくことは、贈与税の最高税率は遺産税の税率の75%になっている。
なぜ、贈与税は遺産税の25%引きだったかということだ。贈与税は遺産税を回避したり、所得税を回避することを防ぐために作られたもので、直接的には税収を上げようとするものではなかったと言われる。25%引きにする事で、金持ちに贈与を促すインセンティブとなり、結果として税の確実な早期回収になった。
贈与税を払うと言うことは遺産税の25%デイスカウントでの先払いであった。将来、高い遺産税を払うよりか、低い税率で今払ってしまおうと言うものである。
2001年税法も遺産税をしだいになくそうとしているが、贈与税は残している。この点で遺産税と贈与税は好対照である。
1948年になると配偶者控除が初めて取り入れられた。生涯贈与額の半分が上限である。これが導入される前は、配偶者への贈与はフルに課税されていた。1950年法は亡くなる前2年の贈与を遺産税に繰り入れるのを前3年とした。1975年法は政治団体への贈与は非課税とした。
大きな変化は1976年法でもたらされた。それまでは贈与税と遺産税はそれぞれ別物であると言う位置づけだった。1977年1月1日から遺産税と贈与税の税率は統合され、最高税率は70%となった。つまり、遺産税は77%から7%ポイント分削られ、贈与税は57.75%から12.25%ポイント増やされた。
さらにこの法は$30,000の直接的な税額控除にした。この税額控除は1981年までに$47,000となる。3年以内贈与の繰り戻しは強制適用になる。また、配偶者控除は最初の$100,000を非課税にしたが、$200,000超えた場合に生涯贈与の50%とした。さらに、世代を飛び越した譲渡で、課税逃れするのを防ぐために世代飛び越しに対する課税(GSTT)を導入した。なお施行は翌年1月1日からとなる。以降も原則的に同じ。
1981年法は配偶者控除を無制限とし、授業料と医療費の贈与を非課税とした。年間非課税枠も$3,000から$10,000に持ち上げた。3年以内贈与は遺産総額に入れられなくなった。その代わり、支払われた贈与税と生命保険の贈与が遺産総額の中に入れられた。さらに最高税率を1982年から4年かけて50%(1982-65%、1983-60%、1984-55%、1985-50%)にした。1981年法は1987年までかけて贈与額の控除を60万ドルまで持ち上げた。
遺産税と贈与税の推移(第二次大戦後)
遺産税 |
贈与税 |
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1977年1月1日 |
最高遺産税率は70%に設定 |
1971年1月1日 |
遺産税と同じ |
1982年1月1日 |
最高税率は65%、4年かけて50%へ減少 |
1982年1月1日 |
遺産税と同じ |
1985年1月1日 |
最高税率は55% |
1985年1月1日 |
遺産税と同じ |
1986年10月23日 |
受取人あたり200万ドルの 贈与額の控除 |
1985年9月26日 |
遺産税と同じで、 1月から遡及 させた |
1988年1月1日 |
最高税率は55%凍結 |
1988年1月1日 |
遺産税と同じ |
1993年1月1日 |
最高税率は55%恒久化 |
1993年1月1日 |
遺産税と同じ |
2002年1月1日 |
2010年に廃止 |
2002年1月1日 |
最高税率は35% |
1984年法は最高税率を55%として3年間凍結した。これは1987年法によりさらに5年凍結された。そして1993年に55%が恒久化された。84年法は市中金利よりも低い低廉の貸付を贈与とした。
1986年10月23日から1989年まで、受取人あたり200万ドルの贈与額の控除となる。
1997年法は非課税贈与額を1万ドルとし、贈与税が申告された後の3年時効が成立した。
2001年法は2010年までに最高税率を35%に減少した。生涯控除は2002年に100万ドルに持ち上げられた。
米国税理士 土田満穂